ある日の時間


「んー…」
場所は個人所有の研究所。
そこで僕は一人黙々と研究をしていた。
僕が研究に勤しんでいるものはエーテルの解析とフォトンの最高度医療に関する物で
自分に関わることでもあった。

自分の削ってしまった寿命を元に戻せないか、というものだ。

そもそもなぜそうしているのかと言えば僕自身の戦闘方法に理由があると言えるだろう。
リミットブレイクに近く、それよりもさらにハイリスク、「命削連術」。
禁忌であり外法、呪術とされているこれは将来「生きるはずだった時間」を代償とし
爆発的な筋力や瞬発力を与えるというもの。
命を燃料にする焔のような物、まさしくそれを表すかのように僕の体には紅の焔のタトゥーが刻まれている。

アークスになる前にそれを体に刻んだ僕はそれに頼り何度も何度も使っていった。
それはアークスになってからも変わらず、むしろ頼る頻度は増えていくばかりで。
それが普通であると思っていたし短命であるのもさも当然であると思っていた。
だけどそれは幾つものきっかけで変わった。

まず一つのきっかけは師匠との出会い。
コハク師匠は私のファイターの師匠で目標で。
ヒューイさんやマリアさんにも会った事はあるけど目標は師匠だ。
きっとそれは師弟である限り変わらないだろうし
それ以上に僕個人として憧れ辿り着きたいと思っているから。

それとリティとの出会い。
彼女との出会いは不思議にもあんまり良くなかったのだけれども。
僕は彼女を避けていたし彼女もトゲトゲしていたし(僕がそう感じていただけなんだけどね・・・)
だけど・・・どこか惹かれていたのかもしれない。
ただ本当のきっかけは覚えてないのと記憶にない。
なんでだろうとは思うけど本当にそこだけないのだからしょうがない。
きっと最初から惹かれていたのだと思う。

一番大きなきっかけは小隊の皆と一緒にいたいから。
容赦がないほどに傍にいてくれて
底抜けにお人好しで
仲間のためなら危険も顧みなくて。
信じられなくて
自分はそうなることなんてできないって思っていたのに。


気付けば
僕も皆の為に何かをしたいって思っていて。


勿論、あの事件も大きく関係している。
申し訳ないとは思っているし
ありがとう、って思っているし。

大恩ある仲間達に何かを返したいなと思った時
自分にある時間がものすごく短い事に気付かされてしまった。
それが普通じゃないと理解した途端床がなくなってどん底の恐怖に叩き込まれたようだった。

「生きなきゃ、生きなきゃいけないんだ」

「僕はまだ、何も返せてないんだ」

アークスの仕事の合間に研究して
ママに頼って医学の知識と技術を学んで。
沢山経験をして。
医学免許、メディカルの資格を何とか手に入れて。
そこから僕の研究は始まったんだ。


「あー…肩凝ったなぁ…」
論文をまとめ研究結果を保存して端末を閉じる。
そしてもう一つのデータファイルを開く。
データは破損していて開くことも修復することも叶わないけどとても重要な情報だった。

おそらく

僕の人生のこれからを左右し
戦いに引き摺りこむであろうほどに。

  • 最終更新:2016-11-06 22:00:28

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